足を舐めてほしいの

 ビジネスホテルのツインルーム。女はあくびしながらスマホを指でなぞる。カーテンから朝陽が差し込んでいる。隣のベッドにはもう一人、男が寝ている。

 女のスマホには占いのメルマガが来ていた、「今宵の3月の満月は乙女座の位置でおこる。魚座という過去を清算する新月から始まって今の気持ちを整えるそんな満月です。」

 女は昨晩のことを思い返す。いろんな偶然が重なって別れた夫となぜか渋谷のホテルへ。

「ずっと返せてなかったホワイトデーのお返しをさせてほしい」

 つづけて元夫はそんなことを言う

「なにか、してほしいことがあれば言って欲しい」

あなたにしてほしいことなんて、なんにも無いんだけどな〜。酔っ払った頭でそんなことを思いながら、元夫になるべく屈辱的なことをさせたい、そんなことを考えた。

「一晩中、足を舐められる?」

「え、いやちょっと一晩中は難しいかな。でも舐めたいから、舐めさせて」

そういって元夫はストッキングを脱ぎたての足にむしゃぶりついた。

1日ストッキングとハイヒールをはき続けて疲れきった、臭い足を丁寧に舐めた。

「じゃあ、もうビンビンだから挿入していい?」

「・・・」

女は、ああこういう人だったわ。だから別れたんだった。

そんなことを思い出しながら。

「こんな短い時間しか足を舐められない人じゃ、わたしもう満足できないの」

そのまま気まずい空気になってシャワーをあびてお互い寝たのだった。

「乙女座の満月ねー。わたし、断れてエライぞ」

女はカーテンを開けて陽射しをたっぷりと受けながら微笑んだ。

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