「靖子さんは、よく来られるんですか?」左側に座る若い男からの意外な質問に驚く。
「え、そう見えますか?」
「あ、なんか失礼な質問だったかも?すみません。こんな美人なのに変態バーに来るんだなって意外で」
「そんな、美人だなんて。おばさんですよ。あなたの親くらいかも・・・。それに私はじめてなんで」
「そうだったんですね、落ち着いてるから。実は僕もはじめてなんですよ。だから、みんな、ほらさっきの裸の人みたいに常連に見えちゃって」
「え、そうだったの?じゃ、お互いはじめて同士ね」
「こんな美人が来て、隣に座ってくれてすごい天国みたいなどころだな、って思ってたところでした」
「いい思い出になるといいね」靖子は、若い男に何気なく微笑んだ。
「え!それって、僕と遊んでくれるってことですか?」
ドリンクをブーっと思わず吹き出す靖子。
「ちょっとちょっと、なんでそうなるのよ。私、人妻よ」
右側の男も会話にまざってくる。こっちは関根とも面識があったようだし、それなりに通っている客なのかもしれない。
「人妻もここに来れば、一人の女ですよ。素直になりましょうよ」
「はあ・・・」素直になったとしても、こっちの男はなんだか気取ってて、ちょっと無いかな、と思った。若い男が目をキラキラさせながら靖子の目線を取り戻そうとする。
「こんなに綺麗なんだから、人妻に決まってますよね!それも、ここに来たってことはやっぱり・・・、そういうことを求めてる。遊ぶ相手を求めてるってことですよね?!と、っと、とししたは、年下はどうですか?ぼ、ぼくとやっぱり、あそびませんか?」
鼻息が荒くなる若い男を遮って、靖子は身振り手振りを大きくする。
「まってまって、私、まだここに座って5分しか経ってないの。それに、遊ぶってどういうこと?変態バー用語なの?」
右の男が近づいて、息が届くくらいに耳元でささやく。
「変態バー用語で、セックスしよう、ってことですよ」
背筋を冷たい汗が流れる。(ひー、もう勘弁して)
「ちょっと待ってー、私旦那と来てるのよ。だから、そういうの無いのー、見学だけなのー」