「え、えっと、関根さん・・・」靖子は目を丸くして裸の関根を見上げる。
「あれ?ケンさんはどこいっちゃったの?」関根はキョロキョロしながら靖子の椅子の後ろに立った。
横に座った男が遠慮気味に「関根さん、ここどきましょうか?」と訪ねる。
「いいのいいの。ここは弱肉強食、早い者勝ちの世界。まずは隣を陣取った君にアタックする権利があるんだから。頑張って靖子ちゃんを口説いてね」
「いいんすか。ありがとうございます!」隣の男の顔がぱーっと明るくなる。マスターがドリンクを靖子にサーブする。
「こちらは、すこしだけアルコールがはいってますが、飲みやすくしてあります」
「ありがとうございます」靖子は震える手でドリンクをもらう。
「こんなところ、女の子は多少アルコールでも飲まないとやってらんないよね」関根は笑う。
マスターが関根にもドリンクを手渡す「関根さんは炭酸水をどうぞ」
「男は黙ってノンアルコール。だってさ」両脇の男と関根は顔を見合わせて笑う。
「男性は飲まないんですか?」靖子は振り返って関根に質問する。裸の男を見るのはちょっと恥ずかしくて眼のやり場に困る。下を向けば、すこしもっこりしたふんどしが目に入ってしまう。
「だってセックスで勃たたなかったら困るからね〜。セックスしなきゃいけないかもしれないじゃん」とあっけらかんと言う関根に「関根さん、しなきゃいけない、っていう言い方は失礼じゃないですか?レディーの前ですよ」とマスターが釘を刺す。
(ちょっといいと思った私の馬鹿。こんな裸の変態、ただセックスしたいだけじゃない)
「あ、そうだった。ごめんごめん。セックスさせていただけるかもしれないからね」
横の男がなんとか会話に混ざろうと割って入る。「酔っ払うと立ちが悪くなっちゃいますもんね」
「そそ、そういうこと。たださ」
「ただ?」男達も、靖子も聞き返す。
「靖子ちゃんみたいな美人が相手だったら、何の心配もないけどね」
そう言ってウィンクをする。
「うわー、よくそういうことさらっと言えますね」男達が寒いという意味のジェスチャーで腕をさする。
「あははは。寒いのは僕の方だよ、裸なんだからさー。いひひ」関根は笑いながら「ケンくんの様子みてくる」と言って、カウンターを離れていってしまった。
「行っちゃいましたね」靖子は男達の目線が自分に戻ってきたのがわかる。
しかし、さっきよりリラックスした空気、受け止められそうである。
(みんな必死なんだな〜。私を口説こうとしてる、ってことなのかな)
「えーと、まず乾杯しましょうか」テレながら男達がいう。
「美人との出会いに」「乾杯」「あはは、関根さんみたい」三人でとりあえず乾杯をした。
(すこし、落ち着いた、のかな?あんまりガッつかれなくてよかった・・・)