エレベーターの中で夫は根掘り葉掘り、興奮した様子で関根に質問を浴びせかける。関根は「まあまあ、そう興奮しないで。いろいろ聞いちゃうと後で楽しみがなくなっちゃいますよ」とたしなめる。
靖子は急に不安になり、モジモジとしたを向いていた。これからやはり、変態なところに脚を踏む混むと思うと、ゾクゾクする部分2割。のこり8割はやはり怖い。
「でも、二人とも心配しないで大丈夫ですよ。自分で望まなければ何にも起きないですから。驚くほど何にもおきません」
「そんなもんなんですか」
「まあそのあたりも中で聞いてみてください」
エレベーターを降りてお店の入り口まで来る。ドアを開けると強面のボディビルダーのような男が職務質問のように面談する。その迫力に押され、夫婦は姿勢を正して丁寧に受け答えしていた。
関根は先に店内に通されて入っていった。
「関根さんがいなくなると、急に心許ない気持ちになるね」夫は不安そうにポケットに手を入れて身体を揺すった。
妻の靖子が応える「あなたも?私もよ。お店はいってもあの人の近くに座りたい。いい?」
「もちろんだよ。いろいろ、あの人に聞いてみよう」
強面のボディビルダーは「関根さんは、いろいろ詳しいですから。聞いてみるといいですよ。ただ」
「ただ?」
靖子は聞き返す。
「まあそれは、のちのち分かりますかね」
ボディビルダーのような男は、この店のマスターだった。面談が一通りおわった後は優しい笑顔で「ようこそ。変態の世界へ」と店内へ案内してくれた。